肝腎かなめのお話

東洋医学の「肝」「腎」は、臓器そのものだけではない

「肝臓」と「腎臓」。現代医学では、それぞれ異なる役割を担う大切な臓器です。
ところが東洋医学の世界では、「肝」と「腎」は単独で働くものではなく、互いに深く関わり合う存在として考えられてきました。

まず知っておきたいのは、東洋医学でいう「肝」や「腎」は、現代医学の肝臓・腎臓とまったく同じ意味ではないということです。
東洋医学では、体の働きをいくつかの大きなシステムとして捉えます。

たとえば「肝」は気や血の巡りを調整することで精神の安定や情緒を調整したり、血を貯めておくという働きがあります。
また「腎」は生命活動の基礎となる「精=エネルギー」を蓄え、成長や生殖活動、免疫力の維持に関わります。

そのため、「肝」=肝臓、「腎」=腎臓と単純に置き換えることはできません。

「肝腎要(かんじんかなめ)」という言葉

日本語には、「肝腎要」という言葉があります。「非常に大切なこと」「最も重要な部分」という意味ですね。
現在は「肝心要」と書くことも多いのですが、「肝腎」という表記があることからも、昔の人が「肝」と「腎」を重要なもの
として捉えていたことがうかがえます。
東洋医学にはさらに、「肝腎同源(かんじんどうげん)」という考え方があります。
肝と腎は源を同じくし、互いに影響し合う――という考え方です。

東洋医学では、「肝は血を蔵す」「腎は精を蔵す」と説明され、「精」と「血」は互いに関係するものと考えられてきました。

また、東洋医学の礎となっている五行という考え方では、腎と肝は母と子の関係にあります。

腎の「精」と肝の「血」は互いを支え合い密接に関係する「肝腎同源」という考え方は、どちらか一方だけを見るのではなく、
体全体のバランスやつながりを見る
ことにつながっています。


「ナマコ」とどんな関係が?

ナマコは中国では「海参(海參/ハイシェン)」と呼ばれています。別名を「海の高麗人参」とも言われ、中国ではその栄養価の
高さから古代より高級食材として扱われ、食文化だけでなく伝統的な本草学の中でも取り上げられてきました。
伝統的な考え方
では、海参は特に「腎」と関連づけて説明される食材の一つです。東洋医学の考え方の一つ
五行では、「腎」―「水」―「冬」―「黒」
が同じグループに分類されます。ここでナマコを思い浮かべてみてください。

海という「水」の中に暮らし、黒っぽい種類も多く、日本では冬に旬を迎えるナマコ。もちろん、これだけを理由に「だからナマコは
腎に良い」と科学的に結論づけることはできません。
けれども、昔の人々が自然界と人間の体を重ね合わせて考えていた世界観から
見ると、ナマコという存在はなんとも興味深く見えてきます。

東洋医学では、人と季節、食べ物、自然、年齢、生活――それらをひとつながりのものとして捉えています。
「肝」と「腎」の関係もその一つ。そして海の中で育つナマコもまた、長い歴史の中で人々の食生活や養生の考え方と結びついてきました。
ナマコを単に「栄養のある海産物」として見るだけではなく、昔の人は、この不思議な海の生き物をどう見ていたのだろう?
そんな視点から食文化をたどってみるのも、ナマコの面白さではないでしょうか。

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